Francois GRINAND – La Vigne du Perron

フランソワ・グリナンの2016年ヴィンテージについては、2018年8月以降にも今年の2月に2016年の全アイテムを試飲しており、その際はリリースを見送りました。
約1年寝かせる結果となった理由は、エルミチュールとエタップにおいては揮発酸によるバランスの欠如を感じられ、セレーヌ・ブランシュは例年よりも酸化的な傾向があり美味しさの持続時間が短いと判断したためです。
今年7月の試飲会で2017年を飲んだ際に、やや還元的で若くはありましたが、溢れ出るような瑞々しい果実感が印象的だったエルミチュールやベルジェール、ペルサンヌのリリースは決まりかなと思いましたが、最終確認しておくため8月21日に改めて2016年を試飲した次第です。その結果、入荷した直後は欠点が前面に表れてバランスを欠いていた2016年が、香り高く繊細な口当たりでフランソワらしいワインに変化しており、私たちは驚きました。2017年も美味しいためどちらをリリースするべきか少し迷いましたが、両方を知っている私たちとしては、現時点では2016年を飲みたいのが率直な気持ちです。

●Bergere/2017(ベルジェール:ルーサンヌ)2019年9月リリース

【2019年7月入荷】

抜栓時は薄濁りの濃い黄色で、新鮮な洋梨やりんご、プラムなどの果実の香りや風味に仄かにドライハーブや鉄分などのニュアンスが混ざります。熟した果実を想像させる甘さが感じられ、口当たりが良くフルーツ感がたっぷりと広がります。時間の経過で色合いはやや褐変し、それに伴い果実感は擦りおろしりんごや黄色いプラム、杏のような風味へ変化していきます。ほどよい甘さと旨味ののった味わいにシャープな酸がバランス良く感じられ、アフターへ小気味好いりんごや杏のような果実香が続きます。初めは明るい色合いで洋梨のようなフレッシュ感溢れる果実の印象を受けますが、徐々にドライハーブや有機のハーブティーのような複雑なニュアンスが混ざり豊かな果実味に膨らみや深みを与え、1本の中でニュアンスの変化を楽しむことができます。

●Serene Blanche/2016(セレーヌ・ブランシュ:ルーセット)2019年9月リリース

【2018年8月入荷】

濃い黄色。柑橘のピールや桃、杏などの果実香にカモミールや甘草、紅茶などを想わせる香りが混ざり、例年に比べ揮発酸は低く穏やかで複雑な風味が印象的です。口に含むとすっと馴染むように広がり、優しい甘さと果実味、ハーブや旨味など様々な要素がバランス良く余韻へ続いていき、アフターには仄かに塩味が感じられます。時間が経つにつれ色合いはややオレンジがかった琥珀色へと変化していきます。それとともに杏のような果実の風味が深まり、干草などのドライハーブやふすまなどの穀物の風味、ミルクティーのような風味が混ざることで複雑さや円みを醸し出します。キレの良い酸は角は丸みを帯びながらワインの輪郭をつかさどりブレのなさを感じさせ、果実の風味と丁度よい塩梅で広がります。しなやかな口当たりで深みと奥行きのある旨味満載の仕上がりで、個性にあふれた魅力的なワインです。

●Persanne/2016(ペルサンヌ:モンドゥーズ)2019年9月リリース【2018年8月入荷】

ややくすんだ軽い赤色。早摘み苺やプラム、アセロラなどの酸のある赤系果実にブラックチェリーやプルーン(果皮は黒く中は黄色の果実)のような黒系果実が加わり、ややドライハーブのニュアンスが混ざりあいます。バラのような華やかな香りも相まって、上品な様子が伺えます。ほどよい甘さとキリッとした張りのある酸があり、香りに似た風味が調和良く広がります。葡萄由来の酸が主体ですが鋭角ではなく凛とした印象で、赤紫蘇のような風味が旨味と複雑さを与え、梅かつおのようなだしの風味が仄かに残ります。この酸があるからこそ今後の熟成にも耐えうる力があり、エレガントさや繊細さを引き出す大きな要素になります。今は輪郭がはっきりとしていて背筋のピンとした綺麗さがありますが、次第に寄り添うようなたおやかさが旨味とともに引き出されていくことでしょう。地味で控えめなイメージはありますが、モンドゥーズにしかない味わいや変化はピノ・ノワールやガメイに負けないくらいの魅力が感じられます。

●Les Ermitures/2016(レ・ゼルミチュール:ガメイ)2019年9月リリース

【2018年8月入荷】

明るい赤色。グレナデンやブラックチェリーなど熟した赤い果実主体にやや黒系果実の香りが加わり、土埃や煙のような大地を想わせる香りも感じられ、果樹の畑に立っているような景色が想い浮かびます。赤い果実がプチッと弾けるような綺麗な酸が均衡を保ち、果実味と調和が良いためスムーズな飲み心地で、入荷時に突出していた樽由来のバニラ香はワイン中に溶け込み円さや柔らかさに変化しています。エタップよりもピノ・ノワールかと想わせるような繊細さや質感、赤い果実の風味などがあり穏やかで落ち着いた様子を感じさせます。約1年休ませたことによりこなれた雰囲気が引き出され、緻密なエキスがありながら上品で柔らかくしなやかな口当たりとなっています。

●Les Etapes/2016(レ・ゼタップ:ピノ・ノワール)2019年9月リリース

【2018年8月入荷】

僅にオレンジがかったガーネット色。熟した苺やドライ苺などの果実香に赤紫蘇などの風味が加わり、新鮮で熟した果実の風味とドライにして旨味や味わいの詰まった果実の印象が混ざり合います。エルミチュール同様、入荷時に比べ繊細で上品な印象が引き出され柔らかさを感じられるようになりました。酸は綺麗で一定に伸びていき、ほどよい甘さと果実味と共にバランス良く口中に広がっていきます。ピノ・ノワールとしてはエキスがしっかりとした温かみのある凝縮感で、だしのニュアンスがやや感じられる旨味ののった味わいです。抜栓2日目は初日に比べ果実味が詰まったような風味が増し味わいは深まります。フランソワの赤ワインに時折現れる木を燻したようなフュメ香がやや感じられ、初日の繊細さに加えやや骨格のしっかりとした印象と味わい深さ、コクや旨味(だし)が感じられるようになります。上品な中にも芯の感じられる仕上がりで、今後の熟成に複雑さだけでなくより一層しなやかな質感がうまれていくことでしょう。

 

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