Claudiu Dumea

クラウディウ・デュメア

フランクフルトから南西に約1時間半下ったエリア、ファルツ地方で2019年から醸造家としてワイン造りをしているクラウディウ・デュメア。以前からフランクフルトでワインバーを経営すると同時にワイン醸造に興味を抱いていたクラウディウは、ある日そこでワイン生産を家業とするハネス・ベルグドルと出会います。ハネスが所有する畑は標高約300mの丘に位置し、森が一面に広がる南側に面しています。その森に生息する鳥や小動物、通年畑へ吹き込む風など、この自然環境と共存する美しい畑に一目惚れしたクラウディウは、ハネスとパートナーシップを組み醸造家としての活動を始めます。

クラウディウのワインの特徴は”ドリンカビリティ(Drinkability)” = ”飲み心地の良さ”にあります。彼曰く、これは石灰質土壌と赤土土壌から構成されるテロワール由来のものだと話します。石灰質土壌はワインに塩味や硬質なミネラル感を与え、アルザスで良く見られる花崗岩土壌の赤土はミネラル感に加えて強い酸味を与える傾向にある。一般的な粘土質土壌と比べ、この2種類の土壌は痩せた性質であるため多くのドイツ系品種が有するアロマティックな部分が抑えられ、ワインの骨格が立ちやすくなる特徴も有する。この土壌性質に加え、通年森から畑へ吹き込む涼しい風も彼のワインに冷涼感を与える一つの大切な要素であると彼は話します。

醸造では「葡萄果汁が野生酵母の働きによりただ発酵しただけのピュアなワインを造る事」を大前提として全ての添加物を一切使用せず完全なサンスフルで醸造しており、ワインは飲み物として常に飲みやすく、安定しているべきだと考えます。そのため、彼はワインを意図的に還元的に造ります。還元は一般的にワインのボディを引き締め、移動の際に状態を崩しにくくして耐久性を上げる二つの効果があるためです。彼のワインは全体を通して石や岩塩を舐めているかの様な印象を与えるミネラリティ、区画によっては海水などの風味も伺え、アタックからフィニッシュまで細く長いレーザービームを想わせる突き抜けるような酸味が特徴的です。彼のワインの大半は複数のヴィンテージと品種がブレンドされており、この点においては、ヴィンテージの特徴をそのまま表現することを好む多くのフランス人生産者とは異なります。近年、地球温暖化が著しく進んでおり、冷涼感が特徴的なヨーロッパ北部のドイツでさえワイン造りに難しさを覚えるようなヴィンテージが増えてきています。彼にとってワインは単なる飲み物、それ以上でも以下でもないため、それぞれのヴィンテージの特徴をありのまま表現する事よりも、ドリンカビリティが確保された上で安定したサンスフルワインを造る事を最大の目的とします。そのため各ヴィンテージのブレンド比率は非常にデリケートな試行錯誤を重ねた上で決められます。

クラウディウのワインを口にした時、その意図や意思が明確に伝わることでしょう。

【畑の基本情報】

  • 標高:約300m
  • 斜面の向き:90%が南向き、残りは東と西向き(これらは全てブレンドに使用)
  • テロワール:石灰質と赤土土壌。醸造時、基本的には土壌別に区別はしない。

【醸造の基本情報】

  • マセラシオン:全て全房でステンレスタンクで行われる。
  • 熟成期間:ペットナット以外のキュヴェは全て500L樽で1年間熟成(*一部例外あり)
    • 樽熟成後、ヴィンテージごとにタンクに移され、ブレンドもしくは翌年以降のリザーブに使用される。
    • Riesling Skin 2020など、2年間かそれ以上樽熟成する場合もある。

*ワインの情報はこちら