ダニエル・ミイェ
「私は添加物に関する知識は持っていないし、それを学ぶつもりもありません。完熟した健全なぶどうを収穫して、その全てを用いてありのまま造る。これはワイン造りを教えてくれたジェローム・ギシャールとフィリップ・ジャンボンへの敬意を表すためです。そのようなわけで2018年のように発酵がスムーズに進まない年もありますが、納得できる状態になるまでリリースしません。」こう語るDaniel Millet(ダニエル・ミイェ)のワインには、独特な個性を感じられます。これは恐らく彼のワイン造りにおける哲学と、彼が手がける畑「バルモン」の特性が見事に融合したものでしょう。我々が最初に飲んだHaut de Balmont 2022は、香りを嗅いだ瞬間のインパクトが鮮烈でした。完熟したぶどうのみが生み出すことのできる、パワフルで強く凝縮した果実味と旨味。少々高めのアルコール度数や樽香も感じられるものの、全体的に柔らかくしなやかな口当たりである上に冷涼感もある仕上がりで、これら全ての要素が絶妙に調和していました。その後に試飲した複数のヴィンテージにおいても、各年の天候による味わいの違いはあるものの、作り手であるダニエルの個性が全てのワインに共通して表現されており、アルコール度数を控えめになどとは微塵も考えていないであろう考えに強く惹かれたのです。
*ドメーヌについて
公務員として働きながら、2011年からワインを造っています。畑の面積はわずか0.8ha、年間生産量は平均2000〜2500本と極めて小規模です。ワイン造りに挑戦するきっかけとなったのは、義理の兄弟ジェローム・ギシャール(ドメーヌ・ソーヴテール)と、彼から紹介されたフィリップ・ジャンボンとの出会いでした。彼らの畑仕事を手伝い、自然を尊重した作業と彼らの造るワインに大きな魅力を感じました。そして2010年にバルモンが売りに出されたことを機に、彼らに背中を押されダニエルもワイン造りに挑戦することになりました。
●畑の特徴
南ブルゴーニュのマコンと北ボージョレのサンタムールの境界にある丘陵地帯の一区画バルモンの斜面上部にあり、南ブルゴーニュの粘土石灰と北ボージョレの花崗岩が混じり合うユニークな性質を有します。一般的に前者がリッチなのに対して後者は痩せており凝縮感を生み出す、この2つの個性が融合した土壌構成はボージョレにおいて珍しく、ダニエルを含めこのエリアの生産者たちは、ワインの味わいに大きく影響していると話します。標高は約450m、昼夜の寒暖差がしっかりとあるため、ぶどうが冷涼感を保ちながら完熟を迎えられる素晴らしい環境です。
●栽培と醸造について
木に負荷をかけない栽培方法を基本とするため、収穫量は求めません。区画の75%を樹齢80年の古樹が占めており、今後も持続的にぶどうを生産できるよう、低収量を心がけて丁寧に栽培しています。醸造では基本的に全房でマセレーション、平均して1ヶ月ほど、ピジャージュとルモンタージュは必要に応じて行います。プレス後の発酵と熟成の期間は、228〜300L樽で7〜12ヶ月間です。初ヴィンテージから一貫して自然発酵、無濾過・無清澄、そして亜硫酸を含むあらゆる添加物を使用しないVin pur jus。
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