メゾン・メナード
カナダ出身のKatie Worobek(ケイティ・ウォロベック)は、5年にわたりドメーヌ・ガヌヴァに勤め、2020年より南ジュラのオルバニャ村でワインを造っています。渡仏した2017年以前は有機農業を学び、飲食店のサービス兼ソムリエを経て、ワイナリーの醸造アシスタントとして活動していました。ワイン造りの本場フランスで実務経験を積むため、現地の自然派ワイナリー数軒に研修を打診したところ、幸運にも当時から強い関心を抱いていたドメーヌ・ガヌヴァで6ヶ月間の研修を受ける機会を得ました。当初は帰国を前提に渡仏したものの、次第にガヌヴァのワイン造りや南ジュラの美しい自然環境に魅了され、その後も現地に留まりドメーヌに勤め続けることを決意、3年後の2020年、ガヌヴァが拠点を構えるロタリエの0.6haの小さな区画「レ・ヴァロン」を取得します。当時フルタイムで勤務していた彼女にとって理想的な規模の区画であり、これを機に自身のドメーヌを設立しました。そして2022年、隣村のグリュッス周辺の3haの畑「オー・カレ」が売りに出されるという、近年のジュラ地方では極めて稀なチャンスが訪れます。ケイティは、土壌構成や標高、斜面の向きなど、レ・ヴァロンを凌ぐ魅力を備えたこの畑を迷わず購入。これにより、ドメーヌ・ガヌヴァから完全なる独立を果たしました。
ケイティのワインには一貫した方向性が窺え、赤は繊細でフルーティ、白は酸とミネラルを重視して醸造、これを長期熟成させ、奥行きのある深い味わいを求めています。特に、白ワインの長期熟成を目指す理由について、彼女は次のように語ります。「ドメーヌ・ガヌヴァに勤めた5年間で最も印象に残ったことの一つは、長期熟成によるワインの進化の仕方でした。例えば、暑く乾燥した2015年ヴィンテージの発酵・熟成中のワインは、2017年時点では重く、やや難しい印象でした。しかし、その後時間と共にテロワール由来の酸味やミネラル感が徐々に表れ、最終的には冷涼感のある素晴らしいワインに仕上がりました。一方、対照的に寒かった2016年ヴィンテージは、当初は刺激的なほど酸味が強すぎてアンバランスな味わいでしたが、長期熟成を経て酸味がほぐれ、柔らかさが加わり、結果的に非常に美味しいものに進化を遂げました。こうした変化はこの2ヴィンテージに留まらず、その他のヴィンテージでも見られました。私はこの熟成過程に大きな魅力を感じるため、ワインは最低でも24ヶ月間の熟成させ、今後は可能な限り36ヶ月間以上の期間を目指して醸造します。」レ・ヴァロンの区画は2022年ヴィンテージを最後に手放し、現在はオー・カレに専念しています。今後の活躍が大いに期待される生産者です。
*ワイナリー名のメゾン・メナードに込められた意味
「メナード」とは、ギリシャ神話に登場するワインの神デュオニュソスの女性信奉者たちを指します。彼女たちは力強く、信念を貫く存在であり、ケイティはその姿に夢のために戦い続ける女性たちの強さを重ねました。
この思いは彼女の代表キュヴェ「De L’Avant」のラベルにも表現されており、社会進出や環境保護をはじめ、それぞれの夢を掲げて邁進する女性たちの姿が描かれています。
*畑の特徴
●オー・カレ:標高400mの北西向き斜面。土壌構成は表面部分がマルヌ石灰、下部分が岩盤と、ミネラル感が豊富に出る傾向にあります。ジュラの五大品種:シャルドネ、サヴァニャン、プルサール、トゥルソー、ピノ・ノワールを扱い、樹齢は約30年(1990年代前半に植樹)。
●レ・ヴァロン:標高約300mの平坦な区画。マルヌと粘土質が混じる土壌。ぶどう品種はシャルドネ、ガメイ、ハイブリッドと複数種類の土着品種。樹齢はシャルドネ、ガメイ、ハイブリッドが40〜60年、土着品種は約80年。
*醸造について
醸造から瓶詰めに至るまで亜硫酸塩を含む全ての添加物を一切使用しないVin pur jus。
●白:ダイレクトプレス後、主に500L樽と3000Lのフードル(アルザス産)で発酵と熟成を行う。基本的には24ヶ月間かけるが、今後は36ヶ月かそれ以上を目指す。
●赤:全房で10〜14日間のマセラシオン。ピジャージュとルモンタージュは必要に応じて行う。
発酵の大部分はタンクで行い、熟成には500L樽を使用する。熟成期間は主に7〜10ヶ月間。
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