トリスタン・ランポン
トリスタン ランポンのワインは薄旨ではなく凝縮感が強く感じられる、栽培と醸造の両面でリスクを負わねば作ることのできない、しっかりと内容が詰まったものです。弊社取扱いの若手生産者を例に挙げるならばビュジェのタイユール・クイユールのように、仕事に対して真剣に向き合い過ぎて、ワインにはややクレイジーな側面もありながら強いエネルギーを感じられる魅力的な生産者だと思います。
標高は520mとボージョレ地方ではかなり高く、その結果として冷涼感が葡萄に備わり、加えて醸造由来の揮発酸とも絶妙にバランスが取れており、ボージョレの2022Vではとても印象深い味わいだと自信を持ってお勧めいたします。ちなみに2021Vは初訪問時に完売しておりましたが、2022年とは正反対の冷涼な年であったにも関わらず緻密でありながら繊細、妖艶さも窺えるワインでした。対照的な2ヴィンテージですが、いずれも素敵なワインを造る生産者だと確信しました。
「ドメーヌ」
2024年時点で30歳。農家を目指していたため大学での専攻は農業学、卒業後数年間は近所の農家で働いていたが次第に自然派ワインの道に興味を持ちDomaine Saint Cyr(ドメーヌ・サン・シール)に勤めてワイン造りを4年間学んだ。初ヴィンテージは2021年。当時は勤めながら約1.5haの畑を所有してドメーヌを立ち上げ、徐々に面積を拡大して2024年の時点で4.70haを所有。
*品種構成
- ガメイ4ha(南東向き4ha、北西向き0.55ha、他合わせて1haほどの小さな区画が複数)
- シャルドネ7ha(南と西向きの区画)
ガメイの土壌はLe Gneiss(ル・ニェイス)、これはボージョレの典型的な花崗岩と同じく酸性だが更に古い時代に形成された片麻岩で、周辺の生産者のワインよりも塩味と酸味が強く出る傾向にあるとのこと。
シャルドネの土壌は別のエリアで典型的な粘土石灰質。
標高は350m〜520m、ガメイの8割は祖父の時代に植樹(1940〜60年頃)されたVVで、トリスタンが引き継ぐまでは普通の栽培だったが、2021年に引き継いで以降、除草剤や殺虫剤、化学肥料はもちろん硫黄と銅以外の農薬散布をすることなく、現在に至るまで一度も耕していない。
収穫量から推察できるものだけでなく、畑仕事のクオリティは、極めて厳しい剪定と摘芽を行っているジュラ地方のルノー・ブリュイエール&アデリーヌ・ウイヨンと同じくらいだと感じます。これはVVとはいえ天候に恵まれた2023年の収穫量も大変に少なかったことが納得できるほど、2024Vの収穫に向けて残している枝の数が少ないため。
*単位収穫量と生産本数
- 2021:7hl/ha(霜、べと病、雹害が原因)1500本
- 2022:14hl/ha(雹が原因)4000本
- 2023:20hl/ha(猛暑ではあったが天候には比較的恵まれてやっとまともな量が取れた年)8000本
*醸造
- 常に全房でセミマセラシオンカルボニック。
- ガメイはコンクリートタンクと228L樽、シャルドネは量が極端に少ないため今のところテンレスタンクで醸造。
- 2021Vと2022Vは生産量が極端に少なかったので、ガメイは若木とVVをブレンドしてAux Arbresの1キュヴェのみ醸造。
- 生産量が少しだけ増えた2023Vから若木とVVを分けて醸造。
バスケットプレス機を用いて手作業でゆっくり行い、タンクや樽で自然発酵させて寝かせるのみ。添加物は一切なしのVin pur jus。極力シンプル、しかし丁寧に醸造して低収量ならではのぶどうが持つポテンシャルを可能な限り自然に、ワインへ転換させることを意識している。ワイン名の”Aux Arbres”とは「森へ行こう!」という意味で、ラベルデザインも含め彼の自然に対する情熱を表す意味が込められています。
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