Hirotake Ooka – La Grande Colline

●Le Canon Rouge/2019(ル・カノン・ルージュ:シラー)赤 2020年11月リリース

【2020年10月入荷】

2017年以降のル・カノンはサミュエル・モンジェルモン氏が醸造することになりました。(*2018年はル・カノンの醸造は行っておりません)
サミュエルはラ・グランド・コリーヌの設立に関わった人物で、今でも共同経営者としてドメーヌの運営に参画しています。ワイン関係の法律に詳しいだけでなく、シャトー・ヌフのとあるドメーヌにて醸造責任者を務めており、2017年以降ル・カノンはここで醸造されています。
ナチュラルワインの醸造においても経験は長く、かなり昔のことですが、サミュエルによるシャトー・ヌフ・デュ・パプ2003年のナチュールバージョンを飲んだことがあります。それは実にジューシーでスタイリッシュ、記録的な酷暑に見舞われた年にも関わらずエレガンスすら感じる素晴らしい味わいだったことを記憶しています。サミュエルは十数年にわたりカノンを飲んで来た人で、大岡さんがどのように醸造しているかも熟知しています。彼が醸造した2017年は大岡さんが醸造した葡萄らしさの残る素朴なニュアンスも感じさせながら、どこか洗練された印象でした。今回の2019年ヴィンテージに関しても、非常に綺麗で端正な仕上がりで、暑い年だったためアルコールは15%程あるにも関わらず、アルコリックな印象を全く感じさせない飲み心地。まさに2003年のシャトーヌフを飲んだ時に感じたものがフラッシュバックするような仕上がりで、これこそがサミュエルのワインに共通するスタイルなのだろうと思います。
手摘みで収穫後、除梗し2週間セメントタンクにてマセラシオン。プレスの後タンクで半年間の熟成。
やや紫がかった深紅の色合い。ブラックベリーやブルーベリーなどのコンフィチュール、ドライプルーンなどのような凝縮した香りに新鮮な黒系果実も混ざる印象で、それに加え紅茶の茶葉を想わせる香り高さが伺えます。口当たりは滑かで負担がなく甘い風味は控えめで、香りにあるような若々しい果実とジューシー感が広がりながら、明るいアタックの印象からアフターにかけて紅茶の風味やビターカカオ、仄かに木の皮のような芳ばしさときめの細かいタンニンが僅かに残り、芯のしっかりとした落ち着いた雰囲気が感じられます。全体を支えるしっかりとした酸が輪郭をつくりキリッとしたスマートな佇まいで、度数15%と高めの表示ながらもアルコール感は全く感じられないどころかむしろ冷涼感さえあり、軽いタッチにすら想わせる程良いミディアムの仕上がりです。
●SP/2014(エス・ピー:マルサンヌ)白 2020年11月リリース
【2020年1月入荷】
(*借りていたサン・ペレの畑を返却したため、この2014年が最後のヴィンテージとなります)
サン・ペレのアペラシオンは取得せずVdFとなり、頭文字を取りSP(エス・ピー)と名付けています。
通常エス・ピーは酸化熟成をしておりませんが、このワインはタンクで1年熟成後に樽で48ヶ月酸化熟成を行なっています。
薄濁りの中程度の黄色。プラムやりんご、アプリコットのコンフィチュール、りんごの蜜などの香りに、文旦や晩柑、夏みかんや八朔など和柑橘のニュアンスが感じられます。酸化熟成とはいえ仄かにカラメルやドライアプリコット、擦りりんごのような風味を感じられるようにパワフルな酸膜ではなく、ジュラワインを彷彿とさせるような旨味の詰まった円さのある優しい仕上がりです。2009年のエス・ピーとは対象的に冷涼感がありピンと張りのある角の取れた酸が中心で、香りに感じられた果実や和柑橘の砂糖菓子のような風味と仄かな乳酸的なニュアンスが感じられます。中盤から酸の周囲を柔らかく包み込むように仄かにバニラを想わせるふんわりとした柔らかい風味や奥深い果実の風味が現れ、じんわりと溢れ出るような旨味が長く残りまろやかな旨味満載の仕上がりです。
●SP /2009(エス・ピー:マルサンヌ)白 2020年11月リリース
【2019年2月再入荷】
サン・ペレのアペラシオンは取得せずVdFとなり、頭文字を取りSP(エス・ピー)と名付けています。
2017年2月に販売したエス・ピー2009年の再リリースとなります。2014年頃はネガティブなニュアンスがはっきりと感じられたために3年ほど保管して状態を整え、味わいが引き出されたところで販売に至りました。
再入荷したこのワインにはネガティブな印象がなく、前回リリースしたものに比べ熟成由来の複雑さや果実の芳醇な味わいが引き出され、抜栓直後から極めて魅力的で引き込まれるような様子を楽しむことができます。
*紅茶の茶葉のような澱が多くありますので、飲む1週間前には立てて保管し澱を下げて頂くと風味の安定感や雑味のない味わいを感じて頂けます。
黄金色。熟したカリンやマルメロ、りんごのコンポートや蜜など芳醇な果実香に、それに加え白トリュフを想わせる魅惑的な香りが感じられます。2009年は暑い年だったことから、他のヴィンテージ比べ色合いやボリュームもしっかりとあり、芳醇でふっくらとした仕上がりです。しかしながら、醸造後約10年の歳月が流れたことにより、膨らみのある味わいの中に他のヴィンテージにはない複雑と深い奥行きが引き出され、豊かな風味の奥にしっかりと大岡さんのサン・ペレらしい白葡萄を皮ごとかじったようなフレッシュな香りや風味、爽やかな酸が今も尚感じられます。舌先をピリッとかすめる感覚が一瞬あり、カリンやりんごのコンポートなどの凝縮感と深みを伴う果実味、白トリュフなど魅惑的で妖艶な味わいが口いっぱいに広がり、それでいて完熟した新鮮な果実のニュアンスと伸びやかな酸がバランスよく重たさを感じさせず、アフターに僅かな塩味も伺えます。加えて熟成由来の複雑さが絡み合う上質なリキュールのような充実した深みが感じられます。秀逸と断言できるほどありとあらゆる要素が詰め込まれた魅力溢れるワインです。
●SJ/2015(エス・ジェー:シラー)赤 2020年11月リリース
【2020年1月入荷】
(*借りていたサン・ジョセフの畑を返却したため、この2015年が最後のヴィンテージとなります)
46ヶ月樽熟成したワインの中から、優れた樽のみをセレクションしたもの。
サン・ジョセフのアペラシオンは取得せずVdFとなり、頭文字を取りSJ(エス・ジェー)と名付けています。
僅かにオレンジがかった中程度の赤色。黒や赤系果実がミックスされたような果実香に、すみれの花のような華やかさ、たばこやインク、そして大岡さんのサン・ジョセフらしいブラックオリーブの香りが感じられます。2015年は暑い年でしたがしっかりと芯を捉える小気味良い酸がありアルコール12%の仕上がりで、密度の高いエキスを感じさせながらもミディアムタッチで雑味のないしなやかな口当たりです。滑らかな質感で馴染むようにすっと流れていくような飲み心地、グレナデンや黒系果実のコンフィチュールなどの芳醇で凝縮した緻密な果実味、すみれの花やブラックオリーブを想わせる風味が溶け込みながら口中に膨らみます。フランボワーズのような香り高く甘酸っぱい赤い果実やブルーベリーなどの新鮮な果実の引き締まった酸とシルクのようにきめ細かいタンニン、ほどよく熟成がかった深みと複雑さ、奥行きが感じられ、とてもエレガントな雰囲気で奥深くに惹き込まれるような魅力溢れるワインです。現状ではシラーの上品な印象や華やかさ、生き生きとした果実味と熟成由来の複雑さ、背筋のピンとした骨格のある様子がバランス良く感じられますが、今後の熟成で複雑さや深み、エレガントで妖艶な雰囲気が一層引き出されていくことでしょう。
●C/2017(シー:シラー)赤 2020年11月リリース
【2020年1月入荷】
(*この2017年が大岡さんが醸造した最後のヴィンテージとなります)
コルナスのアペラシオンは取得せずVdFとなり、頭文字を取りC(シー)と名付けています。
ラ・グランド・コリーヌ設立当時に購入していた山林が、開墾して葡萄を植えることでコルナスのアペラシオンの取得が認められることになった2006年から、大岡さんが自ら開墾を始めた極めて急峻な畑です。大岡さんの師であるティエリーアルマン氏の畑より高くローヌ川が眼下に広がる、森に囲まれた日当たりの良い場所に位置しており、2011年がファーストヴィンテージとなります。
コルナスやサンジョセフは、グラスファイバーのタンクで全房発酵させた後に、通常は500Lの樽に入れて2年以上の熟成を経てからリリースとなりますが、このワインはタンクのみで22ヶ月熟成されています。
深いガーネット色。カシスやブラックベリーなど完熟した新鮮な果実香に、太陽の明るい日差しをしっかりと浴びたような黒葡萄の果皮やブラックオリーブ、紫の花々や香木、紅茶のような華やかさが加わります。2012年のような熟成感のある味わいや風味とは対照的に、熟した黒系果実のピュアで明るい印象をストレートに感じさせます。雑味のないスムーズで瑞々しい飲み心地で、芳醇な果実香に加えて紅茶や香木など華やかで香り高き風味を伴いながら、アタックから口中と駆け抜けるように広がっていきます。若々しい果実味がたっぷりと感じられますが、ジュースのような甘みはなく複雑で奥行きがあり余韻は長く、上品な雰囲気を漂わせます。コルナスとしては溌剌とした明るさを感じる印象ですが、若いヴィンテージにありがちな硬質感はなく、むしろ様々な要素を充分に感じるワインです。コルナスは一般的に飲み頃までに時間を要するイメージを抱きがちですが、このワインには今でなければ楽しめない透明で純粋な味わいがあります。その透明感を味わって頂きたいためリリースしますが、伸びしろを感じられるエキス感とポテンシャルを持っていますので今後の熟成による変化も大いに期待が膨らみます。
●C/2012(シー:シラー)赤 2020年11月リリース
【2019年2月入荷】
コルナスのアペラシオンは取得せずVdFとなり、頭文字を取りC(シー)と名付けています。
ややくすみのあるガーネット色。香りや色合いからも熟成した様子が充分に伺い知れます。赤い果実のドライフルーツ、ドライいちじく、枯葉や腐葉土、ブラックオリーブやたばこ、それに加え黒トリュフの魅惑的な香りが感じられます。2012年はなかなか思うような状態を迎えられない難しい年でリリースに踏みきれず、約8年の長い熟成を経て蔵出しされましたが、待った甲斐があったと心の底から感じられる魅力が溢れています。繊細で軽やかな口当たりで馴染むようにしっとりと流れていき、ほどよく果実の風味を感じさせながら、熟成由来のタプナードや黒トリュフなどの何とも言えぬ深みと複雑なニュアンス、果実味が絡み合いながら、伸びやかな酸とともに広域に広がっていきます。赤い毛氈(もうせん)の上を歩いていくような品のあるエレガントな雰囲気で、余計なものが削ぎ落とされ熟成ならではの繊細で奥深い味わいやだしのような旨味を感じることができます。2017年の明るさと2012年の熟成されたコルナスの対比をすることで、大岡さんのコルナスが熟成していく様子を感じて頂けると思います。

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