*【3】〜【7】は甘口となります。通常のワインに比べ高価ではありますが、甘口は葡萄の収量が特に少なく、乾燥し凝縮するため果汁を取ることが困難です。また亜硫酸なしでの醸造はお酢になってしまう可能性もあるため非常に貴重といえます。500mlで価格的には高価ですが、一度に大量に飲むようなスタイルのワインではありません。冷蔵庫で保管していただければ、抜栓から1年以上かけて味わいの変化をゆっくりお楽しみいただけます。
【1】Boit sans Soif/2018(ボワ・ソン・ソワフ2018年:グロロー)赤 2025年1月リリース
【2023年12月入荷】
粘土とシストの混ざる土壌構成。樹齢約40年。全房で10日間のマセラシオン。ファイバータンクで13ヶ月間の発酵と熟成。2018年はシェネが手がけた最後のヴィンテージとなります。べと病の影響で収穫量が例年の20%程度と極端に減少したため、葡萄が早く熟してややアルコール度数も高く凝縮感のある果実味で、軽快な飲み心地はそのままに味わいの詰まった仕上がりとなっております。
熟したソルダムや野苺、フランボワーズ、ドライ苺やクランベリーに、ブラックベリー、小梅、赤紫蘇、赤い小さな野バラのニュアンスが加わり、野山を想わせる少し素朴な印象を受けます。揮発酸が感じられますが、突出することなく甘やかな果実味やその他の風味と調和しています。熟した赤いプラムから果汁が溢れるようなジューシーな様子で喉を潤し、ほどよい甘みを携えた香り豊かな赤い果実の風味に、梅かつおを想わせる旨味感が絡み合い大きく膨らみます。中盤から時折感じられるピンクグレープフルーツの爽やかなほろ苦さが心地良いアクセントを与え、桃の香りが鼻腔に抜けて愛らしい果実の印象が余韻に長く続きます。
【2】L’O2 Vigne/2014(ロー・ドゥ・ヴィーニュ2014年:シュナン・ブラン)白酸化熟成 2025年1月リリース
【2024年12月入荷】王冠:ガスはありません
2022年6月に樽と熟成期間の違う辛口のアイテム(3年間酸化熟成して2017年瓶詰め)を販売いたしましたが、今回ご案内のアイテムはダイレクトプレスした後、ウイヤージュせずにフロールの下で約5年間の酸化熟成。2019年瓶詰め。少し残糖と揮発酸のある仕上がりとなっております。
薄濁りの仄かにオレンジがかった濃い黄色。りんごのコンフィチュール、熟した黄梅やアプリコットに、白レーズン、フヌイユ、カラメルの香り、少し揮発酸の印象が伺えます。舌先をかすめるピリピリとしたガスが感じられ、凝縮感のある白レーズンやりんごの甘酸っぱい風味が伸びやかに広がります。膨らみゆく中で、ジューシーな果実味にビターカカオやカラメル、ラムレーズンを想わせる風味が現れ、更に充実感やコク深い様子が増していきます。少し残糖のある豊かな果実味や揮発酸が感じられることで、酸化の印象は強くありませんが、液中にはたっぷりと旨みが溶け込み複雑性のある味わいが続きます。抜栓後、2〜3日と経過する中で酸の角が取れて、甘やかさや果実味、旨みと更に一体感が感じられ、円みを帯びたまろやかな味わいへと変化していきます。
【3】Douceur Angevine aphrodite/2009/500ml(ドゥーセール・アンジェヴィーニュ・アフロディーテ2009年:シュナン・ブラン)白甘口 2025年1月再リリース
【2024年12月入荷】
2017年、2020年に販売いたしましたアイテムの再入荷となります。
貴腐菌が付着し始める10月中旬から下旬にかけて収穫。2〜3日間かけてダイレクトプレス。小樽でウイヤージュせずに軽いフロールの下で36ヶ月間の発酵と熟成。2005年まではドゥーセール・アンジェヴィーニュと呼ばれておりましたが、2009年ヴィンテージより葡萄が成熟したことへの感謝とその熟成を強くイメージさせるように、愛と豊穣の女神アフロディーテ(ギリシャ神話の女神)と名づけました。
琥珀のような色合いで、グラスに注ぐと少しとろりとし、ゆったりとした流れが見られます。蜂蜜やラムレーズン、カラメル、メープルシロップ、タバコなどの香り、仄かにパンデピスを想わせるスパイス香やパンの芳ばしさなども加わります。奥深くゆっくりと引き込まれていくような甘さや複雑さを想像させる芳醇さで、アタックには豊かな甘みが感じられますが、酸がほどよく溶け込んでおり柔らかく口中に広がります。酸の役割は非常に大きく、重厚さをほどよく感じさせ深みや果実味を引き立て、余韻には僅かに塩味を感じさせるメリハリのある味わいへと導いています。先にお伝えしたとおり抜栓から1年以上経ても劣化することはありませんので、味わいの変化をゆっくりお楽しみ頂けますので、しっかりと栓で止めて冷蔵管理をしていただければ、長い時間充分にお楽しみ頂けます。
【4】Douceur Angevine aphrodite/2010/500ml(ドゥーセール・アンジェヴィーニュ・アフロディーテ2010年:シュナン・ブラン)白甘口 2025年1月再リリース
【2024年12月入荷】
2016年、2020年に販売いたしましたアイテムの再入荷となります。
貴腐菌が付着し始める10月中旬から下旬にかけて収穫。2〜3日間かけてダイレクトプレス。小樽でウイヤージュせずに軽いフロールの下で36ヶ月間の発酵と熟成。2005年まではドゥーセール・アンジェヴィーニュと呼ばれておりましたが、2009年ヴィンテージより葡萄が成熟したことへの感謝とその熟成を強くイメージさせるように、愛と豊穣の女神アフロディーテ(ギリシャ神話の女神)と名づけました。
やや黄みがかったべっ甲色。甘い蜜やラムレーズン、杏やタバコなど複雑で豊かな香りと味わいです。メープルシロップやカラメルシロップなどのように蜜のような甘い感覚の中に、新鮮なりんごやレモンのような風味を想わせる爽やかな酸が上手く溶け込み、甘酸っぱい口当たりです。アタックからアフターまで芳醇な甘さを感じさせますが甘すぎる印象ではなく、余韻にドライフルーツなどが入ったブランデーケーキやリンゴをカラメリゼしたような風味が長く続き、仄かに感じられる塩味としっかりとした酸がメリハリを感じさせ、とてもゆったりとした贅沢な味わいです。2009年ヴィンテージ同様、先にお伝えしたとおり抜栓から1年以上経ても劣化することはありませんので、味わいの変化をゆっくりお楽しみ頂けますので、しっかりと栓で止めて冷蔵管理をしていただければ、長い時間充分にお楽しみ頂けます。
【5】Amazones/2008/500ml(アマゾヌ2008年:シュナン・ブラン)白甘口 2025年1月再リリース
【2024年12月入荷】
2019年に販売いたしました(2023年再リリース)アイテムの再入荷となります。バックラベルのヴィンテージ表記は0817、0519のものが混載しておりますが、中身は2008年のワインですので、JANコードの余白に2008年と記載しております。
L’O2 Vigneとaphroditeの中間の時期に収穫。2〜3日間かけてダイレクトプレス。小樽でウイヤージュせずに軽いフロールの下で9年間の発酵と熟成。2017年に瓶詰め。
オレンジがかった琥珀色。レーズンや蜂蜜、木樽由来の芳ばしさやカラメル、メープルシロップ、そしてほどよいビターカカオのような香りが甘さの中にどこか大人びた雰囲気を漂わせます。口に含むと蜜のようにゆっくりと流れ、ドライフルーツの甘やかな風味の中に、香りに感じられたカラメルなどの様々な風味が複雑さやコク深さを、酸や仄かな塩味が感じられることで抑揚を与えています。未だ若々しい果実味を兼ね備え、ブランデーやカカオのような風味や香り、甘さの中にも終始締まりのある酸が調和を保ちつつ甘すぎない飲み心地が続きます。鼻腔には僅かにターメリックやコリアンダーなどカレーを想わせる香りやドライハーブなどの香りが抜け、ややオリエンタルな印象を残します。
【6】Cuvee N/2002/500ml(キュヴェ・エヌ2002年:ソーヴィニョン・ブラン)白甘口 2025年1月リリース
【2024年12月入荷】
全体の約50%は貴腐葡萄、残りの約30%は完熟した状態、約20%はレーズン状の凝縮したもの。ダイレクトプレス。ファイバータンクで発酵後、樽に移して約3年間ウイヤージュをせずに発酵と熟成。キュヴェ名「N」の意味は「Natural」のNで、亜硫酸と培養酵母無添加で醸造したことを指しています。醸造学校や周りの生産者の醸造の仕方に関して大きな疑問を持っており、実験的にナチュラルに醸造したことが背景となっております。
オレンジがかった輝くような琥珀色。レーズン、蜂蜜やメープルシロップ、甘草などのドライハーブなどが溶け込み、加えて仄かにビターカラメルのニュアンスが伺えます。とっぷりとした甘やかさがゆっくりと沁み渡るように広がり、甘草や紅茶、ハーブティーなどの風味が深みや複雑性を与えながら口中を満たすように膨らみます。コク深くリッチな印象でありながら、酸がしっかりと感じられることでメリハリをつけながら全体を支え、どこか瑞々しささえ想わせ、喉を通ります。後半にかけて少しビターな風味が絡み合い、甘やかさの中にアクセントや抑揚をつけ、奥行きのある長い余韻へと誘います。
【7】L’Odysee/2008/500ml(ロディセー2008年:カベルネ・フラン)白甘口 2025年1月再リリース
【2024年12月入荷】
2019年に販売いたしましたアイテムの再入荷となります。
樹齢約65年のカベルネ・フランを10月末〜11月上旬にかけて過熟の状態で大部分を収穫。一部収穫しなかった葡萄は木に残したまま干して、収穫した葡萄は屋根裏で陰干し。合計5週間ほど乾燥させ、全て一緒に3〜4日間かけてプレス。樽で9年間の発酵と熟成。
カベルネ・フランのヴァン・ド・パイユを造るのは2005年以来で、プレスした時点で前回とはジュースの香りがまるっきり異なることに気がつき、糖分や酸の凝縮感も異なっていました。バランスを取るために結果として10年に及ぶ樽熟成を経てリリース。名前の由来はギリシャ神話に登場するオデュッセウスの旅ですが、知の探求の意味もあります。ナチュラルワイン造りも苦難と冒険、思考の旅と考えておりその意味も込めて。このワインにおける収穫から醸造で、パイユを造れる年は極めて限定されており、葡萄の樹に付いている状態で酸化と乾燥がかなり進んでいる必要があると悟ったそうです。この年以降、この品種でパイユを造ったのは2015年のみとなります。
オレンジがかった琥珀色で、黒葡萄で造ったとは思えないほど色調は赤からはほど遠い色合いです。ラムレーズンや白レーズン、ビターカラメル、カカオ、メープルシロップ、コリアンダー、ナツメグ、クローブなど凝縮感のある果実や芳ばしいビターな印象、スパイスなど複雑な香りが漂います。甘口ではありますが、張りのある酸があることで口当たりは意外にさらりとした馴染みやすい印象で、滑らかに口中へと流れ込みます。ビターカラメルのようなほろ苦さとラムレーズンから溢れ出るような甘やかな風味、加えてパンデピスなどのスパイシーさが溶け込み、複雑性のある大人びた印象で、酸とビターな風味が甘さのバランス整えながらほどよい甘みが広がります。余韻にはクリームブリュレのようなビターカラメルとまろやかな風味が優しく続き、魅惑的でリッチな印象が残ります。
*今回のリリースは甘口ワインが主体になっておりますが、本文章では、ジャン・フランソワ・シェネという生産者の背景や、一部のワインの違いについて少し触れたいと思います。
シェネはこれまで幾度となく素晴らしいワインを生み出してきましたが、彼の最大の魅力のひとつは、扱う品種ごとの可能性を常に探求し続ける、いわば研究者のような一面にあります。彼自身、「これはワイン造りに向き合う上で、最も大切な原動力のひとつだった」と語っています。シュナンはサヴァニャンやリースリングと同様に、スパークリングから甘口、そして酸化熟成まで幅広く対応できる稀有な品種です。シェネは当初からその可能性に着目し、スパークリングのEurekaやOrionide、辛口ではPanier de Fruitと酸化熟成のL’O2 Vigne、甘口のトップキュヴェL’Ambroisieを始め、数多くのキュヴェを手掛けました。この探究心はシュナンだけに留まらず、カベルネ・フランやグロロー(一度だけ、実験的に甘口ワインを作ったことがあります)にまで及びます。その代表例が今回のリリースに含まれるL’Odysée 2008です。このワインの詳細については、上記の案内文にて記してあります。
* AphroditeとAmazonesについて
●Aphrodite 2010と2009
甘口のベースキュヴェ。案内文でも記述しておりますが、10月中旬以降に貴腐菌が付着し、ぶどうが完熟を超えて過熟の状態で収穫。シェネが手がけるワインの中で最も遅いタイミングで収穫されたものです。過熟状態のぶどうは自然発酵では糖分をアルコールに転換しきれないため、このキュヴェの場合では残糖が170〜250g/Lと必然的に高い値で残ります。味わいの面では、糖分が豊富なため、口中でアルコール感が特に目立たず、3年程度の熟成で美味しく仕上がる傾向にあったとのこと。
*2010年のアルコール度数は13.8%、残糖量が230g/L。2009年はアルコール度数は13.8%、残糖量は170g/L。もし発酵が完了した場合、それぞれのアルコール度数は約27%と約23%になります。
●Amazones 2008
L’O2 VigneとAphroditeの間に収穫された、つまり完熟から過熟の過程で中間状態にあるぶどうを用いたキュヴェ。2005年ヴィンテージに続き、AphroditeやL’O2 Vigneなどのワインよりも大幅に長い熟成期間となる9年を要した理由は、収穫したぶどうの糖度にありました。Aphroditeと比べて糖分が少なく自然発酵がより進みやすい条件にあるため、アルコール度数が必然的に高く仕上がります。そのため、味わい全体のバランスを取るまで9年かかったと話します。シェネは、このワインのアルコール由来の「強さと重厚感」を、ギリシャ神話の女性戦士「アマゾーヌ」にたとえ、ラベルとキュヴェ名に選んだそうです。
*アルコール度数は18%、残糖量は約50~80g/L。もし発酵が完了した場合、アルコール度数は21〜23%になります。ちなみに、過去にリリースした2005年の残糖量は40g/Lでした。
*Boit Sans Soif 2018について
こちらも案内分で一部触れましたが、2018年はべと病が原因で収穫量が例年の約20%まで減少しました。その結果、収穫時期のぶどうの熟し方が普段とは異なり、非常に濃縮され、液体濃度が高くアロマティックに仕上がったとシェネは話しています。抜栓直後は揮発酸や還元香がやや目立っている印象を受けますが、その後数十分の間に桃のような果実味が前面に現れながらワインが猛スピードで調和に向かい、一体感が生まれます。このようなスピード感で良い方向に変化するワインは極めて稀で、これこそ「シェネマジック」と称しても過言ではないほどに興味深い一本です。
*L’O2 Vigne 2014(王冠、5年熟成のロット)について
2022年6月に販売したロットと同じぶどうを使用していますが、当ロットに関してはアルコール発酵が完了しなかった残りの数樽をブレンドして作られたものになります。発酵および熟成の条件は全く同じです。シェネは瓶詰めまでの間に何度か発酵中のワインの澱を足して発酵を促しましたが、このロットに使用されている数樽はどうしても辛口には至らなかったそうです。揮発酸が上昇した理由は、アルコール発酵が続いている途中で乳酸発酵が終了してしまい、その後、液体内の微生物が糖分を揮発酸に変換してしまったことによります。酸化熟成のニュアンスが辛口のロットほど豊かに表れなかった理由については、さまざまな要因が考えられますが、5年間にわたる熟成により揮発酸が柔らかく仕上がっている点は確かです。抜栓後、時間をかけて観察していただくと、残糖と揮発酸が徐々に馴染んでいく過程を楽しんでいただけると思います。